2025/04/08 11:00

▷ CBDと精麻
2025年現在、CBD製品は“リラクゼーション商材”や“心と身体の調律を行うウェルネスツール”として認知が広まり、国内でも着実にCBDの有用性が広がってきました。
こうしたCBDカルチャーの浸透により、「大麻=ダメ絶対」という従来の認識が紆余曲折を経て徐々に緩和し、本来の大麻草の多面的な価値に光が当たり始めています。
しかし2024年12月の法改正により、以前のような高品質のCBDオイルなどの取り扱いが難しくなりました。
原料もアイソレートが主軸になり、多くの人が困惑した事は、まだ記憶に新しいのではないでしょうか。
治験も進んでいるようですが、医療認可への道のりも、まだ道半ばなのだと感じています。
やはり日本国内において、「麻」の栄養素は扱いの難しい素材なのでしょう。
しかし、そんな中、もう一つの麻文化として私たちが注目しているのが「精麻(せいま)」です。

▷ 精麻とは何か?
精麻は、日本で古来より神事や祭礼、儀式に使われてきた大麻草の茎から取り出された光沢ある繊維で、現在は、主に栃木県で生産されています。
CBDと同じ植物由来でありながらも、「精神性」や「空間エネルギー」「魔除け」といった、より“非物質的”な目に見えない価値に重きを置かれてきた麻です。

▷ なぜ今、精麻なのか?
CBDが「身体と心のバランスを整える麻」とするならば、精麻は「空間や心の奥深くに働きかける麻」と言えるでしょう。
スピリチュアル・都市伝説・ウェルネス・自然回帰といった現代の価値観の潮流の中で、精麻がもつ祓い・浄化・光の象徴性は、日本人とって日本という国の成り立ちや、日本人が持つ独特の精神性を改めて知る、極めて重要性の高いキーワードとなります。
本記事では、CBDカルチャーの視点と精麻を通じて、麻文化を再解釈し、精麻とは何か、またどのような精神性・文化的背景を持つのかなどを紐解いていきます。
CBDと精麻という“麻の二軸”を知ることで、新たな視点と文化的意義が見えてくるかもしれません。

▷ 日本においての大麻
日本古来より精麻は、神事や伝統文化の中で神聖視されてきた、特別な大麻繊維です。
現代では目にする機会が減っていますが、しめ縄や神楽の装束、相撲の横綱の綱など、神域と人をつなぐ場面で今尚使用されています。

▷ 日本最大の精麻産地
精麻の主要な生産地は栃木県です。厚生労働省の報告によれば、国内の大麻栽培面積の90%以上が栃木県に集中しており、精麻の栽培・加工を担っています。
なかでも鹿沼市などの地域では、麻農家が長年にわたり技術を継承しながら、伝統的な手法で精麻づくりを続けていることが知られています。
栽培に使用されているのは、THC含有量が極めて低い、政府指定の産業用大麻品種(例:「とちぎしろ」)であり、
・自治体の認可
・年1回の免許制(大麻取締法第4条・第7条)
・警察や保健所の立ち入り検査
といった厳格な監視体制のもとで行われています。

▷ 熟練の職人による''神聖な手仕事''
精麻は、収穫した大麻草の茎から、繊維を抽出・選別・磨き上げて作られます。その工程は、すべてが職人の手による丁寧な仕事です。
以下は、精麻が完成するまでの主な流れです。
・刈り取りと湯かけ(大麻草の茎を熱湯に浸し、柔らかくする)
・天日干し(数日間かけて漂白されるように自然乾燥)
・発酵処理と皮むき(おはぎ)(内皮と外皮を手作業で剥く)
・繊維の引き(麻引き)と磨き(ごみや夾雑物を取り除き、光沢が出るまで磨く)
・乾燥と保管(最終仕上げ後、陰干しし保管)
これらの工程は、最短でも数日間〜1週間以上をかけて行われます。
皮を剥ぎ、繊維を引き出し、何度も磨き上げることで、黄金色に輝く“光の繊維”が姿を現します。
この艶としなやかさこそ、精麻が今なお神事に欠かせない理由です。
※精麻1kgの製造に必要な原麻量についての公的データは確認できていませんが、「非常に手間がかかる素材」であることは複数の生産者証言でも明らかです。

▷ 精麻が使われる“神域の場面”
先ほども軽く触れましたが、精麻は単なる繊維素材ではなく、「神と人をつなぐ媒体」「場のエネルギーを整える素材」として古来より重宝されてきました。具体的な用途は以下の通りです。
・神社神具:しめ縄・鈴緒・祓串・御幣
・ 相撲 :横綱の綱(注連縄)
・ 武道具:弓道の弦(つる)
・ 神職の装束や祭礼道具
・ 近年はアクセサリーや祓いのグッズにも活用
いずれの用途でも精麻は、「清め」「結界」「エネルギーの通路」を意味するところで使われている、日本独自の“神聖な麻”なのです。

▷ どうして神社に「麻」が使われるの?
古くから日本において、「麻には清めの力がある」と信じられ、主な使われ方は、次の3つです。
1. 祓い(はらい)
人や物についた“穢れ”を祓う。
→ お祓いのときに神主さんが持つ「祓串」に精麻が使われています。
2. 浄化(じょうか)
空間や気持ちを整える。
→ 神社の鈴を鳴らすときに握る「鈴緒」にも精麻が使われます。
3. 結界(けっかい)
神聖な場所と日常を区切る。
→ 鳥居や社殿のまわりに張られた「しめ縄」も精麻が素材とされます。
こうした場面で精麻が使われてきたのは、単に見た目が美しいからだけではなく、“目に見えないものを整える力”があると信じられてきたからです。

▷ 精麻って、今の暮らしにも使えるの?
令和となった最近では、神社だけでなく、個人の暮らしの中にも精麻が取り入れられ始めています。たとえば──
・精麻を使ったお守りやアクセサリー
・“結界”の意味をこめたインテリアや壁飾りとして
・自宅の神棚の飾りとして、ヨガや瞑想など心を落ち着かせる空間の浄化アイテムとして
など様々です。
最近は「お清め」や「浄化」、「エネルギー調整」などに関心のある方が増えてきました。
精麻は、「神社でしか使われない素材」ではなく、「自分の暮らしを整える道具」としても活用できるもの。
お守りやアクセサリーとしてちょっと疲れたとき、気持ちを切り替えたいとき、あなたの“場”を整えてくれる存在になるかもしれません。

▷ 途絶える伝統?
精麻を育てる人が、少なくなってきています。
しめ縄や鈴緒など、神社の神聖な場に使われてきた「精麻」。
その美しい繊維には、見た目の魅力だけでなく、祓い・浄化・結界といった、目に見えない大切な役割が込められていました。
でも、そんな精麻がいま、静かに消えかけていることをご存じでしょうか?
精麻を作る農家さんは、全国で見てもほんのわずかです。
精麻は、大麻草(※もちろん、日本の法律で認められた安全な品種です)の茎から取れる繊維です。
ですが、この大麻草を育てられる農家さんは、全国で十数件ほどしかいません。
農家さんの多くがご高齢で、技術継承が難しい状態です。
しかも、栽培には国からの許可(免許)が必要で、毎年申請・管理の手続きがあり、警察や保健所の立ち入り検査もあるため、新しく始めるのはハードルが高いのが現状です。
前述した通り、精麻ができるまでにはたくさんの手間と時間がかかります。
精麻は、機械で大量生産できる素材ではありません。
農家さんが、一本一本の繊維を手で丁寧に処理していきます。
たとえば──
大麻草の茎を刈り取って、熱湯にくぐらせる
天日に干して、発酵させる
皮をむき、繊維を取り出して、磨き上げる
こうした工程を農家さんで行い、ようやくあの金色に輝く精麻になります。
精麻を作るのに麻を収穫し終えたあとも大変な工程があり、ようやく精麻はできあがるのです。
▷ 精麻がいつも使われているとは限らない時代に
しめ縄や鈴緒など、神社の神聖な場所に使われる素材といえば「精麻」。
しかし実際には、すべての神社で必ず精麻が使われているとは限らないという現実もあります。
・国産の精麻は生産量が少なく高価で必要な量が手に入りにくい
・一つひとつ手作業で仕上げるため、どうしても価格が高くなる
・精麻に代わって、似た外観の輸入麻や化学繊維が使用されることもある
など、様々な理由があります。
もちろん、精麻を大切に守り使い続けている神社もたくさん存在します。
ただ一方で、「見た目は似ていても意味合いが異なる素材」が使われているケースがあるという事実も、少しずつ知られるようになってきました。
「しめ縄は何で作られているのか?」
「この鈴緒には本物の精麻が使われているのだろうか?」
そんなふうに素材に目を向けてみることも、私たちが大麻という日本古来の文化にできる小さな関わり方の一つではないでしょうか。
▷ 私たちの取り組みと、精麻のこれから
この素材を、未来へつなぐために。
ここまで読んでくださった方なら、「精麻って、すごく神聖で特別な素材なんだな」と感じていただけたのではないでしょうか。
でも、知ってもらうだけでなく、「どうすれば守っていけるか」まで一緒に考えてもらえたらここまで書いた甲斐があります。
ここからは私たちが日々取り組んでいる活動と、そこに込めた思いをご紹介します。
▷ 暮らしの中に精麻を届けたい
私たちZEN BIOTICSは、「精麻を、現代に合った形で身近な人に届けたい」という思いから、
次のような活動を行っています。
● 精麻アクセサリーやお守りの制作販売
1本の精麻を、手作業で編み、飾りやアクセサリーを販売しています。
日本古来からある「結び」や「染め」の伝統技術を使い、日本古来から続くことを大切にしています。
● ワークショップの開催
初心者や観光客向けに、精麻の歴史や意味を紹介しながら作る体験型の講座を行っています。
「自分の手で結んだ麻に、自然と気持ちがこもる」と話される参加者の方が多く、静かな感動が生まれる場です。

▷ おわりに
精麻の光を、あなたの手の中に
静かで、でも確かな力を持つ繊維──精麻(せいま)。
神社のしめ縄、鈴緒、お祓いに使われる白い麻の束。
私たちが子どものころから目にしてきた神社の中には、
実はこの一本の麻が、いつも寄り添っていたのです。
けれど、その存在の意味や背景を、
私たちはどれくらい「知っていた」と言えるでしょうか。
この文章を読んでくださったあなたは、
もう、“知っている人”になりました。
精麻が、日本の自然から生まれ、
たくさんの人の手と祈りで仕上げられてきたこと。
そして今、ひっそりとその文化が消えかけていること。
でも、だからこそ──
「気づいた一人ひとり」の存在が、希望になるということも。
精麻は、誰かに押しつけられて使うものではありません。
暮らしの中で、ふと触れたくなる時。
心がざわついたとき、静けさが欲しいとき。
祈るように深呼吸したいとき。
そんな時にそっと寄り添ってくれる──それが精麻です。
精麻は、''日本の大麻'' そのものです。
私たちZEN BIOTICSは、この光の繊維を、ひとつひとつの心と手に結んでいくために、これからも活動を続けていきます。
よければ、あなたもぜひご一緒に。
▷ 日本の麻を“語りながら”広めています
私たちが最も大切にしているのは、催事イベントなどで、実際にお客様と顔を合わせ、直接言葉で伝えることです。
全国各地の神社での手作り市やクラフトイベントに積極的に出店し、販売だけでなく、一人ひとりに「これはどんな素材か」を丁寧にお話しすることを続けています。
「麻って、日本の神社でも使われていたんですね」と驚かれる方も多数いらっしゃいます。
私たちはこれを“口伝(くでん)”──つまり、人から人へ伝えていく手の文化・言葉の文化だと考えています。
SNSやネットでは届かない温度感、対話の中で生まれる納得感。
それがあるからこそ、精麻はただの素材ではなく、“意味のある素材”として受け取ってもらえるのです。
▷ 精麻を“日常の祈り”と結びつけるために
精麻は神社のもの、特別な人のためのもの──そう思われがちです。
ですが私たちは、それをもっと暮らしの中へと戻したいと考えています。
忙しい日々の中に、ふっと気持ちを整えるひととき
玄関に結界のように吊るされた一本の麻飾り
お参りのときに、そっとポケットに入れていくお守り
そんなふうに、精麻が一人ひとりの“内なる神聖さ”と静かにつながる存在になってくれたら。
私たちはその一助になれるよう、地道に、でも心を込めて活動を続けています。
🌱 精麻を通して「麻って、いいな」と感じる人が一人、また一人と増えていく。
その積み重ねが、文化を未来へつなぐ道だと私たちは信じています。
■ZEN BIOTICS オンラインショップ
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■本記事は「CBDアドベントカレンダー2025」参加記事として執筆されました。
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おわりにもう一度
精麻の光が、あなたの心と暮らしに、そっと灯りますように。